親族など身近な人が認知症になってしまったという方が非常に増えていると思います。認知症や知的障がい者の方を守る制度があることをご存じでしょうか?超高齢社会となった今日、この制度を知っていただき、そして是非活用して頂きたいと思っています。

それは「成年後見制度」と「任意後見制度」です。

成年後見制度とは簡単に言うと、判断能力が低下した人のための制度です。判断能力が低下してしまいますと、契約や銀行とのやり取り等が困難になってしまいます。また悪質な業者に騙されて不必要な物まで購入してしまうという事も起こりかねません。単身高齢者が増えた日本の社会においては特に問題となります。その様な方の代わりに【財産管理】や【身上監護】を行う保護者を家庭裁判所が選任する制度です。

認知症の方、知的障がいのある方、精神障がいのある方など判断能力が不十分な方々を支援する制度です。判断能力が低下すると、介護施設を利用するための契約などの法律行為や財産管理など、自分で行うことが困難になったり、悪徳商法の被害にあわないかと不安になったりすることがあります。このような方々の為に、代わりに契約をしたり、財産を管理したりして支えていきます。成年後見制度には、法定後見制度と、任意後見制度の2種類があります。

法定後見制度

既に判断能力が低下している場合に、家庭裁判所が適切な援助者(後見人・保佐人・補助人のいずれか)を選びます。選ばれた援助者が、本人に代わって、契約などの法律行為や財産管理など必要な支援をします。

■成年後見制度一覧表

判断能力成年後見人等がすること
法廷後見制度後見日常的に必要な買い物も自分ではできない状態の方成年後見人は、本人に代わって、いろいろな契約を結んだり、財産を管理し(代理権)、もし本人に不利益となる契約や財産の処分などが行われた場合には、それを取り消すなどして(取消権)本人が日常生活に困らないよう支援をします。
保佐日常的に必要な買い物くらいは単独でできるが、自動車の売買や自宅の増改築などは自分ではできない状態の方保佐人は、金銭の貸借や、不動産の売買など一定の重要な法律行為について、同意や、取り消しをして(同意権・取消権)、本人を支援します。本人の同意により、特定の法律行為について代理権が付与されたときは、本人に代わって契約を結ぶこともできます。
補助不動産の売買や自宅の増改築などは自分でもできるかもしれないが、本人のためには、誰かに代わってやってもらった方がいい程度の方補助人は、本人の意向に沿って、重要な法律行為の一部について、同意や、取り消しをして(同意権・取消権)、本人を支援します。本人の同意により、特定の法律行為について代理権が付与されたときは、本人に代わって契約を結ぶこともできます。
任意後見制度任意後見契約を結ぶ契約能力を備えている方任意後見人は、本人と相談して予め結んでおいた任意後見契約の内容に基づき、本人を支援します。
※上記の法定後見制度における判断能力はあくまで目安です。調査鑑定の結果に基づき家庭裁判所が判断します。

法定後見制度の流れ

申立て

家庭裁判所で手続き案内を受けます。申立書や医師の診断書等必要な書類を用意し、家庭裁判所に提出します。※注1

調査・鑑定

家庭裁判所が、申立人・後見人候補者等に事情を尋ねたり、本人の意思を確認したりします。必要があるときは、本人の判断能力について鑑定が行われます。

審理・審判

調査や鑑定が終了すると、家庭裁判所は後見等の開始の審判をし、併せて後見人等を選任します。本人、申立人、成年後見人等に審判書が送られてきます。

登 記

成年後見人等が審判書を受け取ってから2週間以内に不服申立てがされなければ、審判が確定し、その内容が登記されます。登記が済むと家庭裁判所から登記番号が通知されます。

後見事務

家庭裁判所で指導を受けたとおり、本人の財産を預かり、収入や支出を記録し、生活の様子に気を配ります。家庭裁判所から求められたときには、期限までに報告をします。最初の報告は審判確定後一ヶ月以内に提出する「財産目録」と「年間収支予定」です。※注2

後見終了

本人が亡くなったときや、本人の判断能力が回復したときには後見は終了します。家庭裁判所に終了の連絡をし、亡くなった場合には相続人等に財産を引渡し、家庭裁判所に後見事務終了報告書を提出します。

※注1
申立ては、原則本人の住所地を管轄する家庭裁判所にて行います。
申立てをできる人は、本人・配偶者・4親等内の親族等です。
また、申立てをするには、申立書の他に、本人の戸籍謄本、住民票、登記されていないことの証明書、家庭裁判所所定の診断書や本人に関する各種資料等が必要です。

後見人等候補者がいる場合には、候補者についての説明書なども必要です。申立てに必要な費用は、収入印紙・切手代で6千円~8千円程度です。
この他に、医師による鑑定費用が必要になる場合もあります。

※注2
成年後見人等は、財産目録を家庭裁判所に提出するまでは、原則として後見事務をすることができません。

こんなときはどうすればいいの?

法定後見

Q
1. 契約の取り消し
認知症が進行している母親と2人暮らしです。何度か、日中私が働きに出ていて留守の間に高価な布団や着物を買っていました。騙されているのでは、と心配です。
A

お母様に成年後見人がいれば契約を取り消すことができ、財産管理を任せられるので安心です。成年後見制度の利用を検討してみてはいかがですか。

Q
2. 不動産処分
認知症がひどく老人ホームに入所している父がいます。父が住んでいた家を売りたいのですがどうしたらよいですか?
A

ご本人の生活費や入院・入所費の支払いのために必要なときは、成年後見制度を利用してご本人が住んでいた家などを処分することができます。ただし、成年後見制度は、本人のために財産管理・身上監護をする制度ですので、ただ単に不動産を現金化することが目的での制度利用はできません。まずは家庭裁判所に相談することが必要です。

Q
3. 市長申立
お年寄りが近所に独りで住んでいます。認知症がかなりひどいようですが、身寄りの人がいないようです。どうしたらいいでしょうか?
A

法定後見の申立ては、四親党内の親族が行います。しかし、親族がいない、あるいは親族が拒否している等の事情がある場合には、町村長が甲立てを行ますので、成年後見制度の利用をふまえて、市区町村の福祉担当課へ問い合わせされるとよいでしょう。

Q
4. 後見人等の行為
後見人等には、おむつ交換や身の回りの世話などもしてもらえるのですか?
A

後見人等が行うのは、基本的には契約などの法律行為です。ご質問のようなお世話については、後見人等がヘルパーさんなどに依頼をして、サービスを実施してもらうことになります。

Q
5. 遺産分割協議
父が亡くなりました。遠産分割協議をしたいのですが、母は認知症で相続について理解できません。どうしたらよいでしょうか?
A

成年後見制度を利用し、後見人がお母様に代わって遺産分割協議に加わることになります。後見人は、ご本人のために法定相続分を確保しなければなりません。遺産分割については家庭裁判所の監督を受けることになります。また遺産分割が完了しても、後見は終了しないことに留意しなければなりません。

Q
6. 精神障がい
精神障がい者の後見人や保佐人となるときに、特に気をつけることはありますか?
A

精神福祉法によれば精神障がい者の後見人や保佐人は、医療保護入院について同意を求められたときはその必要性を慎重に判断することになります。またご本人が重大な他害行為を行ったときに適用される医療観察法においては、第1順位の保護者になりますので審判の手続きなどに関わることもあります。

Q
7. 精神障がい
知的障がいのある子供がいます。どのような後見制麿の利用が考えられますか?
A

子供さんが成人すると、契約や金融機関の手続きのために、法定後見制度の利用が必要になると考えられます。親御さんが後見人になられたときには、万一に備え、親御さん自身が任意後見制度を利用することも考えられます。

Q
8. 保佐
認知症の父は、住んでいる家(父名義)が古くなって危ないので改築したいようです。ただ、父は普段の買い物は自分でできていますが、改築の契約などを一人でするのは難しいと思います。こういった状態でも成年後見制度は利用できるのでしょうか。
A

成年後見制度には判断能力によって3つの類型があります。「保佐」の場合、不動産の売買や増改築などの法律で定められた一定の行為を行うには保佐人の同意が必要ですので、保佐人が同意をすることによってお父様をサポートすることになります。同意を得ないでした場合は、本人または保佐人は取り消すことができます。また、家庭裁判所の審判によって、保佐人に代理権を付けることも可能です。

報酬の目安

ご依頼の内容報 酬 額備 考
成年後見人に選任された場合月2~6万円(裁判所による目安)